主要論文10編

☆酒井広文研究室の主要な研究成果を紹介します!

酒井広文研究室の主要論文10編(全て酒井グループ単独の成果です)を紹介します。ここで紹介する主要論文は、Nature誌とPhysical Review Letters誌に発表した論文7編に被引用回数の多い論文3編を加えたものです。10編の総被引用回数は2251回(約225回/編)に上ります。被引用数の多い5編に絞れば、その総被引用回数は1683回(約337回/編)に上ります。なお、被引用数は、2023年10月27日現在、Google Scholar調べです。なお、平成25年1月に行われた外部評価では、2005年以降の成果(下記の1~6)を中心に成果報告をしましたが、酒井グループの一連の業績は、専門分野の異なるJ.A.委員にも知られており、同委員からは、「研究業績について文句の付けようがない。」という最大級の賛辞が呈されました。


1.Keita Oda, Masafumi Hita, Shinichirou Minemoto, and Hirofumi Sakai, “All-optical molecular orientation,” Phys. Rev. Lett. 104, 213901 (2010).
被引用回数:151回。
要点:非共鳴2波長レーザー電場のみを用いる全光学的な手法で配向制御できることの確実な証拠を初めて示した論文。

2.Akihisa Goban, Shinichirou Minemoto, and Hirofumi Sakai, “Laser-field-free molecular orientation,” Phys. Rev. Lett. 101, 013001 (2008).
被引用回数:184回。Editors’ Suggestionの対象論文にも選ばれた(2名のレフェリーからも絶賛され、事実上無修正であった)。さらに、Nature誌のRESEARCH HIGHLIGHTSでも直ちに取り上げられた。
要点:静電場とナノ秒レーザー電場を併用する手法にプラズマシャッター技術を導入し、レーザー電場の存在しない条件下での配向制御に初めて成功した論文。

3.Takayuki Suzuki, Yu Sugawara, Shinichirou Minemoto, and Hirofumi Sakai, “Optimal control of nonadiabatic alignment of rotationally cold N2 molecules with the feedback of degree of alignment,” Phys. Rev. Lett. 100, 033603 (2008).
被引用回数:51回。
要点:2次元イオン画像から評価した配列度を直接フィードバックの指標とし、非断熱的分子配列の最適制御に初めて成功した。

4.Tsuneto Kanai, Shinichirou Minemoto, and Hirofumi Sakai, “Ellipticity dependence of high-order harmonic generation from aligned molecules,” Phys. Rev. Lett. 98, 053002 (2007).
被引用回数:154回。
要点:配列した分子試料を用いることにより、高調波信号のレーザー光の楕円率に対する依存性が分子軸の向きと偏光楕円の長軸の向きによって異なることを初めて観測することに成功した。

5.Haruka Tanji, Shinichirou Minemoto, and Hirofumi Sakai, “Three-dimensional molecular orientation with combined electrostatic and elliptically polarized laser fields,” Phys. Rev. A 72, 063401 (2005).
被引用回数:117回。
要点:静電場と楕円偏光したレーザー電場を併用することにより、3次元的な配向制御が可能であることを初めて示した論文。断熱領域における配向制御手法として最も高度な技術である。

6.Tsuneto Kanai, Shinichirou Minemoto, and Hirofumi Sakai, “Quantum interference during high-order harmonic generation from aligned molecules,” Nature (London) 435, 470-474 (2005).
被引用回数:872回。highly cited paper(高被引用文献)に選定された。Nature誌のNews and Views欄(J. P. Marangos, Nature (London) 435, 435 (2005))でも絶賛された。
要点:非断熱的に配列したCO2分子を試料とし、イオンと高調波を同条件下で観測する独自の実験手法の導入により、高次高調波発生の再結合過程における電子のド・ブロイ波の量子干渉効果を世界で初めて観測することに成功した。

7.Takayuki Suzuki, Shinichirou Minemoto, Tsuneto Kanai, and Hirofumi Sakai, “Optimal control of multiphoton ionization processes in aligned I2 molecules with time-dependent polarization pulses,” Phys. Rev. Lett. 92, 133005 (2004).
被引用回数:173回。Nature誌のNews and Views欄で絶賛された(Y. Silberberg, Nature (London) 430, 624 (2004))。
要点:時間依存偏光パルスを配列したI2分子に照射することにより、多光子イオン化過程の最適制御に成功し、分子のトンネルイオン化に関する新たな知見と理論研究のきっかけが得られた。

8.Shinichirou Minemoto, Hiroshi Nanjo, Haruka Tanji, Takayuki Suzuki, and Hirofumi Sakai, “Observation of molecular orientation by the combination of electrostatic and nonresonant, pulsed laser fields,” J. Chem. Phys. 118, 4052-4059 (2003).
被引用回数:95回。
要点:静電場とレーザー電場を併用する手法により気体分子の配向制御に初めて成功した2003年のPRL論文のフルノート。静電場とフェムト秒レーザーパルスの併用による非断熱的配向制御が実現している可能性についても指摘した。

9.Hirofumi Sakai, Shinichirou Minemoto, Hiroshi Nanjo, Haruka Tanji, and Takayuki Suzuki, “Controlling the orientation of polar molecules with combined electrostatic and pulsed, nonresonant laser fields,” Phys. Rev. Lett. 90, 083001 (2003).
被引用回数:299回。ハーバード大学のHerschbach教授(1986年ノーベル化学賞受賞)のレビュー論文(Eur. Phys. J. D 38, 3 (2006))でも取り上げられた。
要点:静電場とレーザー電場を併用する手法により気体分子の配向制御に初めて成功し、その後10年余にわたる当該分野の発展の切っ掛けとなった論文。

10.Tsuneto Kanai and Hirofumi Sakai, “Numerical simulations of molecular orientation using strong, nonresonant, two-color laser fields,” J. Chem. Phys. 115, 5492-5497 (2001).
被引用回数:155回。
要点:非共鳴2波長レーザー電場のみを用いる全光学的な手法により、気体分子配向制御が可能であることを数値シミュレーションで示した。超分極率相互作用によってもたらされるポテンシャルの非対称性により配向制御できることを指摘した初めての論文であり、2010年の酒井グループ自身による原理実証実験(PRL2010)前後から、この論文の重要性が再認識されている。