(3)電子・イオン多重同時計測運動量画像分光装置を用いた「分子内電子の立体ダイナミクス」の研究
これまで酒井グループでは、超短パルス高強度レーザー電場と原子分子との相互作用で発現する数々の興味深い物理現象の観測方法として、(フラグメント)イオンを飛行時間型質量分析器や2次元イオン画像化装置で観測する方法と高次高調波(高エネルギーの光子)を観測する方法を用いて研究を進めてきました。さらに、相互作用の詳細を解明するためには、原子分子中でレーザー電場に直接応答して生成される光電子を観測することが有効であると期待されます。そこで、光電子と(フラグメント)イオンの3次元運動量を同時に計測できる電子・イオン多重同時計測運動量画像分光装置を最近新たに開発しました。イベントを特定するためのコインシデンス測定も可能です。本装置は同様の装置を用いた研究の第一人者である高エネルギー加速器研究機構教授の柳下明先生のご協力を得て開発したため、比較的スムーズに立ち上げることができました。ここに記して謝意を表します。今後、本装置を用い、配列・配向した分子を試料としたトンネルイオン化とそれに伴う非段階的2重イオン化の配向依存性などを明らかにする「分子内電子の立体ダイナミクス」の研究や多原子分子の超高速構造変形のダイナミクスなどを明らかにする研究を推進する予定です。